近年、メンズエステ業界では風営法違反による摘発が相次いでおり、経営者の方々にとって法令遵守がますます重要になっています。
2025年の風営法改正により、業界を取り巻く環境はさらに大きく変化することが予想されます。
本記事では、風営法の基礎知識から最新の改正内容、そしてメンズエステ経営への具体的な影響まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
- 風営法とは?
- 2025年の風営法改正の内容
- メンズエステ経営に及ぼす風営法の改正
風営法とは?

風営法は、正式名称を「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」といい、風俗営業や性風俗関連特殊営業を規制する法律です。この法律の目的は、善良な風俗と清浄な風俗環境を保持し、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止することにあります。
風営法の基本的な目的
風営法が制定された背景には、公共の安全と秩序を維持するという重要な目的があります。
具体的には、風俗営業や性風俗関連の事業が無秩序に営まれることで生じる、治安の悪化や青少年への悪影響を防ぐことが目指されています。
そのため、営業時間の制限、営業所の構造や照明に関する基準、年齢確認の義務など、細かな規制が設けられているのです。
風営法が規制する営業形態
風営法では、大きく分けて「風俗営業」と「性風俗関連特殊営業」の2つのカテゴリーを規制しています。
キャバレーやホストクラブ、パチンコ店、ゲームセンターなどが含まれ、全部で6つの号に分類されています。
ソープランドやファッションヘルス、店舗型性風俗特殊営業などが該当します。
メンズエステは、サービス内容によってこれらの区分のいずれかに該当する可能性があります。
具体的には、異性による密着したマッサージや性的なサービスを提供する場合、店舗型性風俗特殊営業として規制対象になることがあります。
ただし、純粋にリラクゼーションやマッサージのみを提供する健全なエステサロンであれば、風営法の対象外となる場合もあります。
メンズエステと風営法の関係
メンズエステと風営法の関係は、非常にグレーゾーンが多く、経営者にとって判断が難しい領域です。
結論から言えば、メンズエステが風営法の規制対象になるかどうかは、提供するサービスの具体的内容によって決まります。
例えば、女性セラピストが男性客に対して密室でマッサージを行い、その際に身体的接触が密接である場合や、性的なサービスを連想させるような施術を行う場合は、店舗型性風俗特殊営業に該当する可能性があります。
この場合、公安委員会への届出が必要となり、営業地域の制限や18歳未満の立入禁止など、さまざまな規制を受けることになります。
一方で、適切な施術環境を整え、性的なサービスを一切提供せず、純粋にリラクゼーションやマッサージを目的とした営業を行っている場合は、通常のエステサロンやマッサージ店として営業できます。
2025年の風営法改正の内容

今回の風営法改正の背景には、インターネットやSNSの普及によって、従来の法規制では対応しきれない営業形態が増加したという事情があります。
特に、店舗を持たない派遣型の性風俗サービスや、マッチングアプリを通じた営業など、デジタル技術を活用した新しい形態の風俗営業が急増しています。
また、近年の摘発事例を見ると、表向きは健全なマッサージ店やエステサロンとして営業しながら、実際には性的なサービスを提供している店舗が多数存在することが明らかになっています。
主な改正ポイント
2025年の風営法改正では、いくつかの重要な変更点が盛り込まれています。
1.インターネットを利用した広告や集客活動に対する規制が強化されました。具体的には、SNSやウェブサイトでの広告表示において、性的なサービスを暗示する表現や写真の使用が厳しく制限されるようになりました。
2.派遣型の性風俗営業に対する規制が明確化されました。これまで曖昧だった派遣型サービスの定義が明確にされ、届出義務や営業地域の制限などが従来の店舗型と同様に適用されることになりました。これにより、出張型のメンズエステサービスも規制の対象となる可能性が高まっています。
3.従業員の管理責任が強化されました。経営者は、従業員に対して風営法の遵守に関する教育を実施し、違法行為を防止するための管理体制を整備することが義務付けられました。違法行為が発覚した場合、従業員だけでなく、管理監督を怠った経営者にも厳しい罰則が科される可能性があります。
4.罰則が全体的に強化されました。無許可営業や届出違反に対する罰金額が引き上げられたほか、悪質な違反に対しては営業停止命令だけでなく、刑事罰の適用も厳格化されています。
デジタル化への対応強化
今回の改正で特に注目すべきは、デジタル技術を活用した営業への対応が大幅に強化された点です。
インターネット広告の規制では、検索エンジンやSNSでの広告表示だけでなく、店舗のウェブサイトやブログ、動画投稿サイトでの宣伝活動も対象となります。
具体的には、性的なサービスを想起させる写真や動画の掲載、暗示的な文言の使用、料金表示における不透明な表現などが禁止されます。
また、口コミサイトやレビューサイトでの宣伝活動についても、業者が意図的に好意的な評価を投稿させる「ステルスマーケティング」が規制対象となりました。
風営法改正がメンズエステ経営に及ぼす影響

風営法の改正は、メンズエステ業界全体に広範囲な影響を及ぼすことが予想されます。
特に、グレーゾーンで営業してきた店舗にとっては、事業モデルの根本的な見直しを迫られる可能性があります。
ここでは、具体的にどのような影響が考えられるかを詳しく見ていきましょう。
営業形態の見直しが必要になるケース
改正風営法の施行により、まず大きな影響を受けるのは、現在の営業形態が法律に適合しているかどうか曖昧な状態で営業している店舗です。
例えば、密室での施術を行っている、女性セラピストによる身体的接触が多いサービスを提供している、料金体系が不透明である、などの特徴がある場合は、早急な見直しが必要になります。
また、出張型のサービスを提供している場合は、派遣型営業としての届出が必要になる可能性があります。
これに伴い、営業可能な地域が制限されたり、深夜営業ができなくなったりする可能性もあります。
広告・集客活動への制約
インターネット広告の規制強化により、これまで効果的だった集客方法が使えなくなる可能性があります。
特に、視覚的に訴求力の高い写真や動画を使った広告は、性的なサービスを暗示すると判断されるリスクが高まっています。
具体的には、セラピストの容姿を前面に出した写真の掲載、身体の一部を強調した画像の使用、暗示的なキャッチコピーの使用などが制限される可能性があります。
これにより、SNSやウェブサイトでの集客効果が低下し、新規顧客の獲得が困難になることが予想されます。
摘発リスクの増大
風営法改正により、取り締まりの基準が明確化され、罰則も強化されたことで、摘発リスクは確実に高まっています。
警察による取締りも強化される傾向にあり、定期的な立入検査や潜入捜査が増加することが予想されます。
摘発された場合の影響は甚大です。
まず、営業停止命令により、一定期間営業ができなくなり、その間の収入が途絶えます。
さらに、刑事罰を受けた場合は、罰金や懲役刑に加えて、社会的信用の失墜という回復困難なダメージを受けることになります。
風営法改正に伴いメンズエステ経営者が注意すべきこと

風営法改正を機に、メンズエステ経営者は自店の営業実態を見直し、適切な対応を取ることが求められます。
ここでは、具体的にどのような点に注意し、どのような行動を取るべきかについて、実践的なアドバイスを提供します。
セラピスト教育とマニュアル整備
コンプライアンス体制を確立するためには、セラピストへの教育が不可欠です。
いくら経営者が法令遵守を意識していても、現場のセラピストが理解していなければ、違法行為が発生するリスクは残ります。
定期的な研修を実施し、風営法の基本的な内容や、禁止されている行為について周知徹底する必要があります。
具体的には、新人研修の際に必ず風営法に関する教育を含める、年に数回の定期研修を実施する、法改正があった際には臨時の説明会を開くなど、継続的な教育プログラムを構築することが重要です。
また、施術マニュアルを整備し、許可されているサービスと禁止されているサービスを明確に区別することも必要です。
営業実態の定期的な見直し
一度コンプライアンス体制を整備したからといって、それで終わりではありません。
営業実態は日々変化するため、定期的に見直しを行い、法令遵守の状態が維持されているかをチェックする必要があります。
具体的には、週1回程度は店舗の巡回を行い、施術室の状態、照明の明るさ、清掃状況などを確認します。
また、顧客からの苦情やトラブルがあった場合は、その内容を詳細に記録し、再発防止策を検討します。
顧問弁護士・専門家との連携
風営法は複雑で、解釈が難しい部分も多いため、経営者だけで全てを理解し、対応することは困難です。
そのため、顧問弁護士や行政書士などの専門家と継続的に連携することが強く推奨されます。
顧問契約を結ぶことで、日常的に発生する法律的な疑問について、気軽に相談できる環境が整います。
また、法改正があった際には、いち早く情報を提供してもらい、必要な対応を助言してもらえます。
緊急時には迅速な対応が可能になるため、リスク管理の観点からも重要です。
まとめ
2025年の風営法改正は、メンズエステ業界に大きな変革をもたらすことが予想されます。
規制の強化と罰則の厳格化により、これまでグレーゾーンで営業してきた店舗は、事業モデルの根本的な見直しを迫られることになるでしょう。
しかし、この改正を単なる規制強化として捉えるのではなく、業界全体の健全化と信頼性向上のチャンスと捉えることもできます。
適切な法令遵守を行うことで、顧客からの信頼を獲得し、長期的に安定した経営を実現できる可能性が高まります。
